米の生育や品質に大きく影響すると考えられている水田の水管理。水稲栽培では水管理が作業の3割を占めるとも言われ、美味しいお米を収穫するためには生育に合わせた細かな水管理が必要になってきます。そこで今回は、稲作における水管理の工程をおさらいしつつ水田の水管理に欠かせない排水設備をご紹介します。
稲の成長に合わせた水管理の工程
水稲は、植え付けから収穫までの間生育ステージに合わせた水管理を行っています。ここでは、稲の成長に合わせて行われる水管理の工程をご紹介します。
①活着期
植え付け後活着するまでは5~7cmとやや深水管理を行います。これは、田植え後の苗の傷みを防ぐ効果と湛水により保温効果を高めることで苗を保護するために行われます。急に灌水を行ってしまうと浅植えされた苗が浮いてしまうことがあるので、ゆっくりと灌水し苗が水没しないように気を付けてください。
暖かい日中などは、浅水にして地温を高めることで発根を促します。しかし、低温時の浅水や落水は地温を低くしてしまうので避けるようにしましょう。
②分げつ期(ぶんげつき)
分げつ期では、2~4cm程度の浅水管理を行い水温や地温を上昇させ初期生育を促進させることに努めます。昼夜の水温較差が大きいほど分げつが促進されるので昼は止水し、朝夕に入水するようにしましょう。
稲わらが大量にすき込まれていたり、地下への水はけが悪い圃場では気温が上昇するとともに根の生育が阻害されるので、水の入れ替えを随時行うことをおすすめします。
③中干し
中干しとは、酸素が少なくなった土壌から発生する有毒ガスを抜くほか、土に酸素を供給することで根の生育を促進させるための作業です。一般的な中干しは、田植えの約1ヶ月後を目安に行いますが、生育状態で見極める場合は、2葉以上ある茎が平均して20本以上になっているかを確認してください。ただし、中干しを行う期間や程度は土壌条件、生育状況、天候などによって異なるので注意が必要です。
④幼穂形成期(ようすいけいせいき)
中干し後は水を入れる工程と抜く工程を数日毎に繰り返す間断灌水を行います。これにより水分と酸素が供給されて根の生育を促進することができます。穂ばらみ期と言われる出穂の7~10日前から出穂期(しゅっすいき)にかけては水分の蒸散量や酸素の消費量が最大値になるので、土壌の水分や酸素が不足しないように適切な間断灌水を行うことが必要です。
⑤登熟期(とうじゅくき)
近年、登熟期にあたる期間が高温であることから水持ちの悪い圃場(ほじょう)を中心に水分不足となり白未熟粒(しろみじゅくりゅう)や胴割粒(どうかつまい)の発生が多くなっています。そのため、出穂期から20日間は圃場(ほじょう)の水を切らさずに2~3cm程度の湛水状態にしておくことが重要です。適正な圃場の水分が確保されるよう間断灌水を行い胴割米の発生を防止しましょう。最後に、刈り取り1週間前程度になったら落水を行い圃場の水を完全に抜く作業を行います。落水は収穫直前に行うのがいいといいと考えられていますが、収穫の際に土壌が乾燥していないとコンバインでの作業がしにくくなるので時期の見極めが重要になってきます。
水管理の重要性
一般的に、小麦などの穀物は水に浸けて育てると根から呼吸することができなくなり枯れてしまいます。一方で水稲は、水に浸すことで生育が促されるという特徴を持っています。これは、他の作物とは違って根、茎、葉が酸素を通すことができるように組織が発達していることや、根から酸素を逃がさないようにするバリア機能があることから酸欠状態になっても茎や葉から吸収した酸素を根に送ることができると考えられています。とはいえ、水に浸したままの状態では水稲も酸欠状態になってしまいます。田んぼの水を生育に応じて管理することで品質のいいお米ができあがります。

水田の水管理におすすめの排水設備
ここでは、水田の水管理が行えるおすすめの排水設備をご紹介します。
水田の表面排水に【落水函 ET1型】
「落水函 ET1型」は、水田の表面排水が行える一筆排水桝で、付属のセキ板により水田の水位調整が可能なタイプです。合成樹脂でできているので耐食性や耐薬品性に優れているだけでなく、経済的でコストパフォーマンスに優れているという点も特徴のひとつです。また、コンクリート製のものと比べて軽量のため設置も簡単に行えます。パイプ径は100mm、125mm、150mmの3種類となっています。
【取り付け方法】
田面に本体の排水口を合わせて差込口に排水管を差し入れたら土を埋め戻してください。
合成樹脂でできた一筆排水桝【落水函 ET2型】
「落水函 ET2型」は、合成樹脂でできた一筆排水桝です。ET1型と同様、付属のセキ板による水位調整や軽量性、耐食性・耐薬品性などに優れているのが特徴となっています。ET1型と違う点としては、排水口が深い作りになっているので裏作排水と冬期排水が行えて二毛作にも対応可能な商品です。パイプ径は100mm、125mm、150mmの3種類となっています。
【取り付け方法】
田面に本体の排水口を合わせて差込口に排水管を差し入れたら土を埋め戻してください。
水田排水用ゲート【みはり 排水桝取り付けタイプ(AK-UTシリーズ)】
「みはり 排水桝取り付けタイプ」は、溝部取付仕様のステンレス製水田排水用ゲートです。コンクリート製の排水桝板溝幅230~345㎜に取り付け可能となっています。水田の水位調整が自在に行えて底排水も行えるのが特徴で、排水桝への取り付けも簡単に行えます。サイズは300mm、320mm、350mm、400mmの4種類となっています。利用されている排水桝に合わせてご使用ください。
水田排水用ゲート【みはり 排水桝外付けタイプ(AKシリーズ)】
「みはり 排水桝外付けタイプ」は、ステンレス製の水田排水用ゲートです。AK-UTシリーズ同様、水田の水位調整が自在に行えて底排水も可能となっています。コンクリート製の排水桝外幅310~405㎜に取り付けることができます。サイズは300~320mm、350mm、400mmの3種類となっています。
利用されている排水桝に合わせてご使用ください。
水田排水用ゲート【みはり 排水セット(AK-ST30)】
「みはり 排水セット」は、コンクリート排水桝がない場所にも設置が行える水田排水用ゲートです。底排水タイプになっているので水田の転作時などに利用します。水位調整が自在に行えて取り付けが簡単なので、排水桝を増やしたいと考えている方におすすめの商品です。農業・農村が持つ多面的機能を維持するために行われている「多面的機能支払交付金」に対応した商品のため、導入時のコスト負担も抑えることができます。
水位調整に!【排水閘】
「排水閘」は、水田の水位調整が自由に行える排水設備です。余剰水の自然排水や局地的な豪雨の際の畦の崩れも防ぐことができます。塩ビパイプに接続して使用するタイプで、パイプの規格である「VU-100」に適合する100型と「VU-150」に適合する150型の2種類となっています。
【取り付け方法】
・田面側に水位調整版がくるように取り付けてください。
・取り付け高さは田面=0目盛にします。
・圃場乾燥を行うために浅い溝を掘る場合は、それに合わせて水位調整版を押し上げるか抜き取るかしてください。
・トラクターなどによる破損を防ぐため取り付け場所は畦畔の中にしてください。
給水、排水管理に!【水番 スマートタイプ】
「水番 スマートタイプ」は、給水と排水どちらにも対応しています。水量調節版が二重構造になっているので上下させるだけで水位のスムーズな調整が行えるのが特徴です。材質は再生ポリエチレンを使用しているので環境に優しく厚めの作りで耐久性にも優れています。取り付けも簡単で「VU100」、「VU150」の塩ビパイプに連結可能となっています。
ワンタッチ水位調整器【みとちゃんシリーズ】
「みとちゃんシリーズ」は、水田の排水がワンタッチで行える水位調整器です。取手を上下するだけで水位を簡単に調節できるので稲作の水管理を省力化することができます。水位目盛りが付いているので水管理の確実性もアップ。水田に手を入れることなく操作できるので安全で衛生的であることも特徴のひとつです。サイズは小型、中型、大型、特大の4種類で市販の排水用「はこます」にも対応しています。
※写真は中型です。
【取り付け方法】
・穴を掘りストッパーキャップを付け高さを調節します。
・シャッターを下げて土を入れます。その際に土を強く押さえないようにしましょう。
・周りの土に水をかけてシャッターを上げて取り付け完了です。
まとめ
稲の成長に合わせた水管理は大変ではありますが、品質の高いお米を収穫するためには欠かすことができない作業です。今回紹介した排水設備を利用して効率的な排水作業を行いましょう。
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