除草方法には「清耕栽培(せいこうさいばい)」と「草生栽培(そうせいさいばい)」の2つがあることをご存じでしょうか。清耕栽培は除草剤や草刈り機を使用した、雑草を取り除く除草方法です。除草剤は人への悪影響から、使用方法の見直しがなされています。もうひとつの除草方法である草生栽培は今回のテーマである「草で草を抑える」除草方法です。イメージがつきづらいですが、どういった方法なのでしょうか。草生栽培に使用するものを「草」、それ以外の除草するものを「雑草」として説明していきます。
草生栽培(そうせいさいばい)とは

草生栽培は、草で雑草を覆って除草してしまおうという方法です。一見無理やりなように聞こえますが、果樹園で使われる土地管理方法です。牧草に使われるイネ科や、緑肥として使われるマメ科の植物などが使われます。植物の種を撒き、草が伸びてきたら適宜草刈りをして管理します。また、花が咲く種類の草は景観を良くするので、観光農園としての役割も果たします。
草生栽培(そうせいさいばい)の効果
3つのメリット
その1 草刈りの労力軽減

1番のメリットは、草刈りの労力が軽減することです。様々な雑草が生えている環境での草刈りは、伸びた草を刈っても別の種類の草が次期をずらしてまた伸びてくるので、頻繁に草刈りを行う必要があります。しかし、草生栽培ではひとつの種類の草を管理するだけなので、草刈りへの労力が軽減します。また、草刈りが不要な品種も存在します。このような品種は、成長後に自然に倒木して地表面を覆うため、長期間にわたり雑草抑制効果を得ることができます。
その2 深耕(深く耕す)効果

草の根は地中深くまで伸びていき、土を耕します。土は深く耕されることで、排水性や通気性が増すので重要なメリットです。通常だと深く耕すことができない果樹の近くでも、根を傷つける心配がありません。また、草が生えている範囲がまんべんなく耕されることも魅力のひとつです。

その3 草が有機物の補給源に


草生栽培では草が有機肥料としての役割も果たします。刈り取り後や倒木後に草が分解され、植物に養分として吸収されます。また、緑肥としても有名なマメ科の植物は、優れた窒素供給源となります。
注意点


次は草生栽培(そうせいさいばい)の注意点を見ていきましょう。
注意点1:養水分
草の成長には栄養と水分が不可欠です。施肥量が草生栽培を行う前と同じでは、草と樹木で養分を奪い合うことになります。これでは作物の成長が遅くなったり、サイズが小さくなったりと元も子もありません。養分と水分の奪い合いを軽減する方法には次の2つが考えられます。
対策
■施肥量をふやす
草が吸収する分を増やして施肥しましょう。
■短く刈り揃えておく
草を短く管理しておくことで、必要な養分が少なくて済みます。また、植物は葉から蒸散した分の水を吸収するので、養分だけでなく水分の競合対策にもなります。



注意点2:病害虫
病害虫の発生しやすさも、草生栽培で心配されることのひとつです。
対策
■短く刈り揃える
害虫発生の原因は草丈にあります。草が伸びたままでは、害虫の住処になるため、呼び寄せて繁殖させてしまいます。草刈りを適度に行い、大きい草は抜き取りましょう。



おすすめの草
草の種類によって栽培に適した地域が異なるので要チェックです。雑草対策以外に得られる効果も異なるので、違いを見ていきましょう。
草刈り不要!【オオナギナタガヤ (ゾロ)】
使用目安
■播種期:
東北北部・寒高冷地・東北中部・南部:9月上旬~9月下旬
一般地:9月中旬~10月中旬
西南暖地:9月下旬~11月上旬
■播種量:2~3kg/10a
■対応地域:東北・関東・中部・甲信越・近畿・中国・四国・九州・沖縄
特徴
・自然に倒伏するため刈り取りは不要です。
・マルチ効果により長期間雑草を抑制します。
・枯れて堆積していく茎葉は有機物として土壌改良に貢献します。
・表土の流亡防止、根による深耕効果も得られます。



留意点
・雑草の競合を防ぐために、播種前には除草剤散布・中耕作業により地表面をきれいに処理しておきます。
・時期と量を守り、ムラなく播種した後は軽く覆土をします。
・基肥は残肥で対応し、十分に生育させるために春先に窒素成分で2~5kg/10a程度を追肥します。
(速効性肥料、目安として硫安10~20kg/10a)
・雑草が発生した場合は、翌年以降のことを考え、雑草が種子を落とす前に手取り除草・刈取り・除草剤散布などの対応をしておきます。
・落ち種子のみに依存するとムラがでることがありますので、生育の少ない部分に追い播きします。
(追い播きの種子量は1年目の半分量程度で十分です。)
暑さに強い!【バヒアグラス (ペンサコラ)】
特徴
・暖地型草種で踏圧と耐暑性が極めて強く、永続性に優れる草種です。



留意点
・播種適温は平均気温20℃以上です。
・砕土・整地をていねいに行ってください。
・悪条件(干ばつ・多雨など)で播種する場合、多めに播種してください。
・均一に播種した後、ローラーを2回以上かけてしっかり鎮圧してください。
・雑草の発生がひどい場合は生育初期に草刈りをしてください。
・刈り遅れると再生不良や嗜好性低下の原因になります。
草丈80-120cmをめどに刈高10cmで刈り取ってください。
播種期が2回!【イタリアンライグラス (マンモスイタリアンB (ビリケン) )】
使用目安
■播種期:
東北北部・寒高冷地・東北中部・南部
春播き:4月上旬~4月下旬・秋播き:9月中旬~10月中旬
一般地
春播き:3月中旬~4月中旬・秋播き:9月中旬~10月下旬
西南暖地
春播き:2月下旬~4月上旬・秋播き:9月下旬~11月上旬
■播種量:3~4kg/10a
■対応地域:東北・関東・中部・甲信越・近畿・中国・四国・九州・沖縄
特徴
・根が地中に深く入り、土壌の団粒化と浸透を改善します。
・生育が早く上に向かって開くように成長するため、雑草抑制効果が高い品種です。



留意点
・なるべく丁寧に耕起、砕土整地しましょう。
・比較的室外に強い品種ですが、水田裏作や転作する場合は圃場排水に注意して下さい。
・播種後の覆土と鎮圧は必ず行ってください。覆土は2-3センチが目安です。
緑肥効果あり!【ヘアリーベッチ (まめ助 (ナモイ))】
使用目安
■播種期
北海道:
5月上旬~6月中旬・7月下旬~8月中旬
東北:春播き:
4月上旬~5月上旬・秋播き:9月上旬~10月中旬
一般地:春播き:
3月上旬~4月上旬・秋播き:9月中旬~11月上旬
西南暖地:春播き:
2月中旬~3月下旬・秋播き:9月下旬~11月下旬
■播種量
北海道:5kg/10a
都府県:3~5kg/10a
■対応地域:全国
特徴
・早生品種で初期生育が旺盛なため、従来のヘアリーベッチに比べて雑草の競合に強い品種です。
・根粒菌による窒素固定効果があります。
・つる性のため雑草に絡みついてなぎ倒しにしながら生育します。
・開花後に枯れた後もマット状を維持するため、雑草抑制効果を維持します。



留意点
・水はけの悪い圃場では、生育が不良となる場合もあるため、排水対策にご注意ください。
・播種後は覆土と鎮圧は必ず行ってください。
(水稲収穫後の土壌水分が高いうちは、荒起こし後に播種するのみで覆土・鎮圧が必要ありません)
・すき込みの時期は、後作物の作付時期から3~4週間前が基本ですが、窒素成分量が過多になる恐れがある場合には早めのすき込みをお勧めします。
・自然枯死による雑草抑制にも効果があります。
開花後に次第に地際から枯れ上がり、やがて全面に枯死してマット状に地面を覆います。その後、ロータリーで簡単にすき込むことができます。すき込まずにそのまま放置しておいても、地際からゆっくり分解します。
踏圧に強い!【ダイカンドラ】
使用目安
■播種期
東北北部・寒高冷地・東北中部・南部:5月下旬~6月下旬
一般地:5月上旬~7月中旬
西南暖地:4月中旬~7月中旬
■播種量:10㎏/10a
■対応地域:東北・関東・中部・甲信越・近畿・中国・四国・九州・沖縄
特徴
・半日陰~陽地まで生育可能で、また、過湿土壌でも生育が可能です。
・踏圧には比較的強いですが、過度の踏圧では密度が低下することがありますのでご注意ください。
・ヒルガオ科の暖地型多年生草種です。
・一度播種して定着したら、長年利用できます。
・びっしりと地表を覆い、雑草を寄せ付けません。
・成長スピードは遅く草丈も低いので、管理がしやすい草種です。(草丈:5~10cm)
・踏圧には比較的強い品種です。



留意点
・過度の踏圧では密度が低下することがありますのでご注意ください。
・基肥については通常無施肥ですが、肥料分の少ない圃場では窒素、リン酸、カリで各5kg/10aの施用が目安となります。
まとめ
商品 | 特徴 | 対応地域 |
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自然に倒伏して マルチ効果があります。 |
東北・関東・中部 甲信越・近畿・中国 四国・九州・沖縄 |
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踏圧と耐暑性が 極めて強いです。 |
関東・中部・甲信越 近畿・中国・四国 九州・沖縄 |
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春と秋に播種できます。 | 東北・関東・中部 甲信越・近畿・中国 四国・九州・沖縄 |
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根粒菌による窒素固定が 行われます。 |
全国 |
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草丈が低く、 踏圧に強いです。 |
東北・関東・中部 甲信越・近畿・中国 四国・九州・沖縄 |
草生栽培には3つのメリットがあり、注意点も対策できることが分かりました。草生栽培に使われる草には様々な種類があり、播種時期や得られる効果が異なります。目的や環境に合わせた種類を見つけてみてください。
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