接ぎ木とは?野菜で接ぎ木を行うメリットとおすすめのアイテムを紹介

野菜や果樹等の様々な作物で使われる栽培技術の「接ぎ木」。難しいイメージもありますが、強い苗を作るためには欠かせない作業のひとつでもあります。そこで今回は、初めてチャレンジしようと考えている方向けに接ぎ木のメリットや方法、必要な道具を紹介します。

目次

接ぎ木苗のメリット

そもそもなぜ接ぎ木をするのでしょうか?メリットから見ていきましょう。

病害虫に強くなる

接ぎ木では、台木に病害虫に抵抗性のある品種を利用することで病害虫に強い苗を作ることができます。農薬の使用回数を減らすことも可能になるため、低農薬で栽培したいと考えている方にもおすすめです。

連作障害が起こりにくい

同じ科の野菜を同じ圃場で育てる場合、輪作や土壌診断を行った上での適切な施肥しなければ連作障害に繋がる危険性が高まります。連作障害とは、土壌中の栄養分の偏りによる病気の発生のことです。つまり、前段の理由同様に、接ぎ木苗によって耐病性を高めることで連作障害の発生を軽減することができます。

環境によるストレスに強くなる

暑さ、寒さ、乾燥といった環境によるストレスに強い品種を台木に利用することでさまざまな気候に耐える苗を作ることができます。そのため、生育環境の管理が難しい家庭菜園などでも栽培しやすいと言えます。

収穫量が増加する

上記のような病害虫や環境ストレスなどに強い苗を作ることで草勢がよくなるため、一株当たりの収穫量を増加させることも可能となります。

デメリットは?

接ぎ木苗を自分で作る場合のデメリットは、やはり手間と時間、技術が必要ということです。たくさんの苗が必要になる場合は、その分人手を増やさなくてはいけない場合もあるでしょう。また、接ぎ木は繊細な作業になるため、活着の成功確率を上げるには、熟練度が物をいう世界です。

接ぎ木とは


接ぎ木とは、根の部分となる「台木」の枝や幹の部分と、花や実を付ける「穂木」の枝や芽の部分を接着させてひとつに繋ぎ合わせる栽培技術です。そうすることで、台木が持っている耐病性などの有益な性質を穂木に受け継ぐことができたり、品質向上や連作障害が回避できたり、農業生産において欠かせない技術と言えます。

活着する仕組み

植物は、傷付けられるとその周囲にある細胞が分裂し組織を再生させる「カルス」が形成され切り口部分の回復を促します。接ぎ木ではこの特性を利用することで、台木と穂木をつなげて活着させることが可能になります。 接ぎ木は果樹などの樹木では古くから行われていたことがわかっていますが、国内で初めて接ぎ木が実用化されたのは、1927年の兵庫県の農家がつる割れ病を回避するためにカボチャの台木にスイカの穂木を接いだことだと言われています。その後、キュウリでも接ぎ木の実用化が始まり、現在はトマトやナスといったナス科の植物を中心に普及しています。

接ぎ木を行う時期は?

接ぎ木は3~4月頃に行われることが多いですが、絶対にこの時期でなければいけないということではなく苗の成長によって判断します。例えばトマトの接ぎ木を行う場合には、台木の播種を最初に行い2~3日後に穂木の播種を行います。台木と穂木ともに本葉が3~4枚になった頃が接ぎ木のタイミングです。

台木と穂木の播種の順番や時期は作物によっても違いがあるので注意しましょう。

接ぎ木の方法

接ぎ木とひと口に言っても方法はさまざまで、現在最も普及している方法である「全農式」をはじめ「割り接ぎ式」、「挿し接ぎ式」、「呼び接ぎ式」4種類の方法が行われています。ここでは、主にウリ科やナス科などの栽培で行われている接ぎ木の方法を紹介します。

それぞれの方法と手順を見ていきましょう。

全農式

「全農式(正式名称:全農式幼苗接ぎ木苗生産システム)」は、台木と穂木を斜めに切って接ぎ木用ホルダーで固定して行う方法です。接ぎ木の方法の中でも作業が簡単で短時間で済むというメリットがあります。おかげで、これまで1日400~500本しか生産できなかった接ぎ木苗が、今では1日1,000~1,200本まで生産が可能になりました。現在流通している接ぎ木苗の約7割がこの「全農式」が占めていると言われています。

STEP
台木のカット

台木は子葉の上を約30度になるようにカットします。

STEP
穂木のカット

穂木も台木と同様に約30度になるようにカットします。

STEP
ホルダーのセット

台木に接ぎ木用ホルダーをセットし、台木と穂木の切断面が重なるようにホルダー内で密着させます。

割り接ぎ式

「割り接ぎ式」は、本葉と芯をカットして切り目を入れた台木に、くさび型にカットした穂木を挿して接ぐ方法です。切断面が大きいため穂木が萎れにくいというメリットがあります。

STEP
台木のカット

台木の本葉を1~2枚カットして、茎の断面に穂木を挿すための切り込みを入れます。

STEP
穂木のカット

穂木は、子葉から上の部分の本葉2~3枚程度残してくさび型にカットします。

STEP
台木と穂木の接着

台木に穂木がしっかりと合わさるように穂木の切断面が見えなくなるまで挿し込みます。

STEP
クリップで固定

接合部分を接ぎ木クリップで固定します。

挿し接ぎ式

「挿し接ぎ式」は、芯に穴をあけた台木に先を尖らせた穂木を挿し込んで接ぐ方法です。接ぎ木クリップなどでの固定が不要で作業性にも優れていますが、接ぐのが難しいので長年の経験が必要な方法でもあります。

STEP
台木のカット

台木は本葉1~2枚を残してカットします。

STEP
茎に穴を開ける

爪楊枝やキリのような先のとがったもので、茎に少し斜めに差し込み穴を開ける。

※茎がさけないように注意が必要です。

STEP
穂木のカット

穂木は子葉の下部分を尖らせるようにカットします。

STEP
台木と穂木の接着

穴は中心からずらすことにより、空洞部分以外ではないところに挿すことで固定でき、活着を促進させる事が出来ます。穴をあけたらすぐに穂木を挿し込みます。

呼び接ぎ式

「呼び接ぎ式」は、台木と穂木を土から引き抜きそれぞれに切り込みを入れて接ぎ、ポットに植え直す方法です。工程が多く作業も少し複雑ですが、台木と穂木両方の根があるため萎れにくいというメリットがあります。

STEP
台木のカット

台木は上から下へ半分程度切り込みを入れます。

STEP
穂木のカット

穂木は子葉に近い部分を下から上に切り込みを入れます。

STEP
台木と穂木の接着

台木と穂木の切り口を合わせます。この時、なるべく穂木の双葉が台木の葉の上に来る方が好ましいです。

STEP
ポットへ植え直し

接合部分をクリップで固定してポットに植え直します。

STEP
確認

1週間ほどで活着するので穂木の茎を半分ほど切ってみて萎れないことを確認し、全て切り取ります。

固定用器具

接ぎ木苗は活着後に台木のわき芽が出てくるため、その都度取り除く必要がありますが、固定用器具を使用することでわき芽の発生が少なくなり芽かき作業の省力化にもつながります。また、苗が大きくなるにつれて自然に外れてくれるのでひとつひとつ外していくといった手間もかかりません。

ホルダータイプ:「スーパーウィズ」

「スーパーウィズ」は、切り口を傷めずにスムーズな作業が行える接ぎ木用ホルダーです。内部に水滴が溜まる構造になっているので、穂木の乾燥を防いで活着を良くするといった効果もあります。17号、20号、23号の3つのサイズがあり、用途に合わせて選ぶことができます。

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スーパーウィズ

切り口を傷めずにスムーズな作業が行える接ぎ木用ホルダーです。

クリップタイプ:「接ぎ木フレンド」


「接ぎ木フレンド」は、呼び接ぎ式や割り接ぎ式の方法を用いる際におすすめの接ぎ木用クリップです。支点を浮かして均等な圧力挟持ができるので活着しやすいのが特徴。ウリ科・ナス科兼用で5色あり、鮮やかな特殊色は育苗整理にも役立ちます。ジベレリン処理時の目印にも役立ちます。

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接木フレンド

苗の接木した部分を止めるための専用クリップです。

接ぎ木を成功させるポイント

接ぎ木は、方法によっては成功率はあまり高くありませんが、接ぎ木の成功率を上げる為にいくつかのポイントがあります。できる限り接ぎ木に失敗しないためのポイントを紹介していきます。

道具に注意!

穂木と台木の形成層が癒着するまでに1ヶ月ほどかかります。いかに隙間なく密着させ続けられるかが接ぎ木のを成否を分ける事になります。その為接ぎ木は断面の形成層が重要になります。穂木や台木を切る時には切れ味のよいもので切り、断面がなめらかになる様にするのが重要です。

ポイント

  • よく切れる刃物を使用する。

日光に注意!

接ぎ木は乾燥させないことが重要です。接ぎ木を行う日だけではなく、接ぎ木の後もある程度融合するまでは直射日光をあてないようにするのが大事になります。

ポイント

  • 作業する場所は遮光をして日光が入らないように注意する。
  • 活着するまではトンネルをかけて寒冷紗などで遮光する。
  • 活着したら時々日光に当てて徐々に慣らしていく。

乾燥に注意!


接ぎ木は形成層がくっつく事で1つに融合するため、断面の形成層が乾かないようにすることが重要です。植物が傷を治すために分泌するカルスという細胞が出ます。それがかさぶたのような役割を果たして断面を覆います。分泌する前に乾いてしまっては形成層ができず融合できなくなってしまいます。

ポイント

  • 特に割り接ぎ式や挿し接ぎ式の場合は切り口が乾燥しないようにする。
  • 接ぎ木した苗はすぐに鉢上げをせずに湿らせたタオルなどで覆い樹液が固まるのを待つ。
  • 鉢上げ後は接ぎ木部分を水で濡らさないようにかん水をする。
  • 萎れている場合は霧吹きで葉を湿らせてあげる。

まとめ

商品名特徴サイズ

スーパーウィズ
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透明のホルダーで、切り口に傷がつかないように保護するため、接ぎ木作業がスムーズに行えます。

※用途に合わせて、サイズを選びましょう!
17号、20号、23号

接ぎ木フレンド
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呼び接ぎ式や割り接ぎ式でおすすめの接ぎ木クリップ。

均等に圧力がかかるため、活着させやすいのが特徴です。
1サイズのみ(クリップ部分:横幅約2.5mm×縦幅約5mm)

接ぎ木というと難しくて大変そうと考えている方も多いかと思いますが、接ぎ木方法に関する知識と道具を揃えれば自分で行うこともできる栽培技術です。接ぎ木苗は通常の苗と比べて値段も高いので一度覚えてしまえばコストを抑えながら強い苗を作ることが可能になります。最初から成功させることは難しいですが、何度かやっていくうちにコツを掴んで上手に接げるようになるので繰り返し行うことも重要です。 今回紹介した接ぎ木方法やおすすめアイテムを活用して、ぜひ接ぎ木にチャレンジしてみて下さい。

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